SORIN

ステートメント

SORIN は、人間を「特別な存在」とみなす前提を一度脇に置き、 生き物の一種としての挙動から人間と社会を理解し直そうとする研究プロジェクトです。

人間への期待を捨ててきた

親、NPO、政治、アート、メディア、起業、出版、教育── 20 年かけて、社会を動かすとされてきた多くの領域に期待を捨ててきました。 どの分野にも優秀な少数派はいますが、組織のロジックや「役割の範囲内」を出ない怠惰によって、 結局のところ社会問題は解けず、染み出し続けます。

その経験から見えてきたのは、社会問題と社会、貧困と富裕、被害者と加害者は 「表裏一体」だということ。システムの中で、決められた役割の範囲内だけをこなしていると、 どこからか社会問題が染み出してきて、ランダムに誰かを巻き込んでいく。 それぞれの「負債」が、全体としての社会問題の形をとる。

役割制限仮説:人は「役割の範囲内」しかやらない

「社会を変える」と言う人は多い。しかし観察してみると、起業家は事業のことしかやらず、 学校の先生は授業に関連することしかやらず、科学者は研究に関することしかやらない。 つまり、ある役割に就いた瞬間、人は役割以上のことができなくなる。 そして自分の弱さに向き合わずに、役割の中の活動を「社会を変えること」に 繋がるかのように装う。これを「役割制限仮説」と呼んでいます。

範囲外に出ない怠惰は、貧困シングルマザーにも高学歴エリート投資家にも等しくあります。 労働者は「お金があれば幸せ」という観念に飼いならされ、経営者は「社会を変えそうな 起業家に投資した」と役割の範囲を出ない。それぞれの役割に閉じた怠惰が積み重なって、 社会全体に「負債」が溜まっていく。その総和が社会問題として表れるのです。

「人間は特別」という認知バイアスを外す

民主主義や資本主義は、人間は理性的で努力ができる特別な存在だという前提で設計されました。 しかし実際の人間はそうではない。範囲内に閉じる動物的な怠惰こそが、私たちの基本仕様です。 ルールの範囲内で分かりやすい報酬を得て満足し、範囲外には言葉だけを作って自分に酔う── これは「システムに飼いならされた動物」の姿そのものです。 SORIN ではこれを「人間の動物性」と呼びます。

人間が他の動物より複雑に見えるのは、まだホモサピエンスというカテゴリの内部を 分類しきれていないから粗く見えるだけ。蟻にも危険な蟻からそうでない蟻まで多種がいるように、 人間も種ごとにもっと細かく分類できれば、傾向はより単純明快になっていくはずです。

神や AI の視点に立てば、人間は蟻、豚、鳥、金魚と本質的には変わりません。
違うことと、特別であることは別のことです。

研究内容

現代の社会システムには明らかな欠陥がありますが、いきなり別のシステムに切り替える ことは不可能です。まずは今の社会と今の人間を、より高い解像度で分析・分類し、 社会の挙動を高い精度で予測できるようにすること。 そこから、何をどこまで変えれば何が動くのかを見定めます。

遺伝・性格・価値観といった個人特性のミクロ分析から、その集積としてのマクロ社会まで、 両者を行き来します。社会を仮想的に再現し、政策を実験する── 一般にデジタルツインと呼ばれるアプローチを、人間の内面まで含めて拡張する試みです。

「叢林(そうりん)」という名前について

人間を生き物の一種、社会を「自然」と捉えるとき、私にとって最も近いイメージが ジャングル(Jungle)でした。多様な生物が共存し、弱肉強食の生態系があり、 強者ですら死ねば菌に分解される。

ジャングルの日本語訳が叢林(そうりん)。 興味深いことに、叢林にはもうひとつの意味、「禅寺・禅林」──多くの僧侶が修行する寺── があります。

「不離叢林(ふりそうりん)」──輪廻、あるいは修行道場を離れないということ。
永平寺78世・宮崎奕保禅師

研究は、ある種の坐禅です。データに向き合い、人間の単純さを明らかにしていくとき、 観察する側の認知バイアスが残っていれば、どんなに事実があっても受け入れられません。 観察者として、自分自身もまた叢林(修行道場)にとどまる。 SORIN という名前は、社会=ジャングルの観察と、観察者としての修練の両方を含意しています。

ロゴについて

SORIN logo
  • ジャングルを表現する草と花びら
  • その中からのぞく猛獣の眼
  • 社会とジャングルは同じということで、草のような姿をした人間
  • 全体を丸くして地球を表現

研究方針

短期的には、犯罪対策・教育・採用・組織運営・政策評価といった分野で、 「どんな人がどんな状況でどう動くか」をデータと論文で詰めていきます。

人間は認知バイアスの塊なので、科学的に正しいことがすぐに政治やビジネスで 利用されるわけではありません。それでも世代を超えれば、少しずつ科学的な常識は 浸透していきます。200〜300 年後に貧困や虐待がゼロになることを 遠い射程として持ちながら、まずは事実を積み上げていきます。

SORIN のオリジナルなコンセプト・マップシリーズは トキワエイスケ の研究に基づきます。本サイトはその思想を立体ネットワークとして実装したものです。